親父の影響か、小さい頃からソフトクリームが大好きなぼくは、日本全国を旅しながら、なんだかんだでどえらい数のソフトクリームを食べてきたなあと思い立ち、その影響でお腹まわりまでソフトになってきたこの代償をテキストとともに燃焼してやろうかという、よこしまな考えをたっぷりデコレーションした連載です。つまりは、まあ、ただのソフトクリーム図鑑です。お気軽にどうぞ。
第5回 僕はソフトに恋をした。

ソフトクリーム販売の定番と言えば高速道路のサービスエリアや道の駅。しかしその実、カフェにそば屋にたこ焼き屋と、それはまあ色んな場所でソフトは売られています。それだけソフトクリームの需要があるということなんだろうけど、一方で、ソフトクリーム販売がいかにハードルの低い気軽な商売かの証明でもあるわけで、そこはちょっと複雑。そういうまさにソフトなシステムを確立したN社をはじめとするソフトクリームメーカーさんの努力に敬意を表しつつも、そのぶん、愛のこもっていないソフトクリームが増えていることはソフトファン代表として憂いたくもなります。

カップでニュルっと出すだけの某S社の商品を使っているオリジナリティのないソフトはまだましで(あれはあれで美味しいもんね)、それよりもですよ。せっかく作り上げてくれた某社のニュートラスなベースに、ただただ奇をてらったブレンドを加えて変わり種ソフトを提供してほくそ笑んでるお店や、なんだかわけのわからないものをオンザリッツよろしく、onして満足してるお店には、ほんと怒りがこみあげてくる。だって、ほんと愛がないもの。

先述のとおり、SAや道の駅が定番なことでもわかるように、ソフトクリームなんてものは一期一会な商品だからリピーターなんていらない。という割り切りのもと、その場でなんかインパクトあったら、話の種にみんな買っていくんじゃね? 的なソフトはこのコーナーでは絶対に紹介したくない。

と、まあそんな前置きを経てですよ。今回満を持してご紹介するのは、恐山が有名な青森県むつ市にある「チューリップマート フジムラ」のソフトクリーム。

地元のスーパー的商店で売っている、この一見普通のソフトクリームに、僕は見事に惚れ込んじゃいました。だって関西に住む僕がですよ、下北半島という、行きにくいったらないこの店に、かれこれ5回は足を運んでるんだから、我ながら相当なもんです。それもいわゆるバニラソフトにですよ。ふっつ〜に美味しいバニラソフト。しかしね、一度食べてみればみんな気づくんです。その愛の深さに。

ここ「チューリップマート フジムラ」のソフトの秘密は、まさに、その愛の深さにあるのです。深さ。シンプルなバニラソフトを食べすすめていくと、コーンのなかから現れるもう一つのコーン。コーンはコーンでもコーンフレークです。さ、ら、に! その下から現れてくるのが麦チョコ! 僕はこのコーンの奥深くにある愛の結晶に、飛び上がらんばかりに歓喜しました。アイスクリームとは愛すクリームなのだ! と、ヤンキーよろしく思い上がったのはこれが最初で最後の経験です、はい。

その秘密はまさにその工程にありました。ソフトクリームを注入する前に、コーンの底に注がれる麦チョコたち。

さらにその上にコーンフレークが入れられて、

ようやく基礎工事終了。

その上にようやくソフトクリームが鎮座しての完成!
となるわけです。

ソフトクリームを食べきってのこるコーンほど物悲しいものはありません。溶けて原液と化した、もはや「汁」と呼ぶべきソフトがコーンをブヨブヨにさせる、その姿はまるで「せんべい汁」。天に向かって凛と立っていた凛々しき姿はどこへやら……。と、それがですよ! いやいやここからがメインですといわんばかりに現れるコーンフレークに、憧れのケロッグモーニングな気分。さらに締めはご飯系でと言わんばかりの麦チョコに、僕は完全に恋をしました。

ソフトクリーム数あれど、これほどの愛を感じるソフトはなかなかありません。そんな「チューリップマート フジムラ」のソフトクリームでした。LOVE♥ソフト!

【情報】
ソフトクリーム
大 200円
中 150円
小 100円

チューリップマート フジムラ
青森県むつ市横迎町2丁目2-5

第4回 ええ頃合いナンバーワンソフト

 ふらりと入った定食屋のランチが、やけにボリューミーだったときの嬉しさったらないけれど、これがソフトクリームになると話は別。ぼくのように、変わり種ソフトを見つけたらとにかく食べずにおれないという、ある種の業を抱えた人間にとって、そのあまりあるサービス精神は、出来ることなら押し入れにそっとしまっておいてもらいたい。だって、ソフトクリームというフィールドにおいては、世の奥様方と同じく「いろんな種類をすこ〜しづつ食べたい」わけです。ガキの使いの「きき○○シリーズ」じゃあるまいし、一口食べて違うぞって思っても「これはわたしが食べたかったソフトでは、ございま……せんっ!」なんつってごみ箱に叩き付けるわけにもいかず、そこはありがたく食べきるわけです。自分ではじめといて自分で受けるこの罰ゲームの不毛さは、3EXILE(せっかく入ったEXILEを3日で辞めること。二ヶ月弱の場合は48AKBともいう)に匹敵します。

 そこで、紹介したいのがこれ。兵庫県神戸市にある鈴木商店のソフトクリーム。

 見ての通りのミニサイズ。ぼくはね、すべてのソフトはこのサイズにすべきだと思うんですよ。いっぱい食べたい人は、これを二、三個みたいな。でもね、このちょっと食べ足らない感じが「また来よう」って気にさせるわけです。一口食べて「あっ!美味い!」二口食べて「うん、濃厚すぎずいい感じ」3口食べて「ふむふむミルク感もしっかり」4口食べて「あれ? もう……おわり?」5口目あたりで「うあ〜っもう一個食べたい〜っ!」と、これこそが適量。味も同じく、ちょうどいいと言いますか、濃厚さも甘さも舌触りもとにかく適度で程よいんです。これこそ王道ソフトの鏡。やっぱり帰る港はここだわ。

 ちなみにここ鈴木商店はアイスキャンディも人気。添加物が一切入ってないまっすぐな鈴木商店のアイスも、ぼくにとっては夏の風物詩的存在なのです。

【情報】
ソフトクリーム 200円

鈴木商店
神戸市東灘区田中町3-1-1
078-431-5744 ‎
営業時間:10:00〜16:00(売り切れ次第終了)
火・水、休み


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第3回 真摯のたしなみソフト

 前々から、ソフトクリームを持っているおっさんほど、隙だらけな生き物はいないな。なんて思っていたぼくは、自分がまさにそうだという自覚を持ちながら、ソフトクリームに接しています。おっさんがソフトクリームを食べようと口をあんぐりあけるあの瞬間の無防備さは、もはや、長閑と表現したいほど。あの瞬間のおっさんは、一人の人間というより、春の陽気に包まれる田園風景のよう。
『ひどく口論しているおっさんを見つけたら、双方にソフトクリームを持たせなさい。さすれば、争いは一発でおさまるだろう』
とは、よく言ったものだ。……って、ほんとに何を言ってんだろう? ぼくは。

 まあ、とにかくソフトクリームってものは、その風体から滑稽だし、そんなソフトクリームを、まさにクールにいただくなんてことは不可能なんだと、そう思ってたわけです。だけど、今回ご紹介するこのソフトクリームに出会ってぼくは、「人間だって月にたてるんだ!」ってくらいに驚き、且つ歓喜しました。東京渋谷にある『白一』さんの「生アイスコーン」。そう、これはまさに、武士にとっての日本刀。騎士にとっての剣です。紳士の食べ物ここにあり! ですよ。

 し・か・も、連載三回目にしてこんな宣言しちゃいますけど、ここのソフトクリームの味、そして食感は、ぼくにとっての理想。はっきり言ってソフトクリームチャンピオンです。牧場系のソフトクリームにありがちの、無闇な濃厚さがまったくなく、牛乳の美味しさをそのままアイスにしましたというその味は、ぼくにとってもうピッタンコォッ!!! さらにさらに、元来、高知県の名物「アイスクリン」好きなぼくは、ソフトクリームにも微妙なシャリッと感を求めてしまうからやっかいなんです。しか〜し! そんな鬼教官のような僕の要望になんなく応えて平然と立つその姿に、ぼくはもうひれ伏すしかありませんでした。だからね、そんな、おっさんがどうだとか、剣だとか、わけのわからないことを冒頭で書き連ねたことに、ここに来て猛反省してますよ。好きな女子にちょっかいだす男子じゃあるまいしね。ほんとすみません。

 ということで、お口直しよろしく、こちら白一さんの、誠実な言葉をごらん下さい。

http://www.shiroichi.com/about.html

ね? この実直さがそのまま見た目に現れてます。いやほんと、なんだかごめんなさい。本気で大好きなんです。白一。

【情報】
生アイスコーン 380円

こだわり牛乳生アイス 白一 本店
東京都渋谷区神南1-7-7 ANDOSⅡビル 1F
03-3461-5353
営業時間:10:00〜22:00(3月〜10月)、11:00〜20:00(11月〜2月)
年中無休


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第2回 逆さにしても大丈夫!?

今回は穏やかに、子供の頃のソフトクリームの甘い思い出を……なんて書き出してみたものの、ソフトクリームにまつわる子供時代の思い出と言ったら、もたもたしているうちに溶けて再びソフトクリームの素と化した液体が、コーンの底から上着やズボンにぽたぽた落ちて、親にこっぴどく叱られたことや、まだ一口も食べていないソフトクリームのクリーム部分を子供特有の気の弛みから、即、床に落として、親に思いっきり阿呆よばわりされたことなど、甘いというよりは、確実に苦い思い出ばかり。

自分も親になってわかったけれど、ソフトクリームを子供に一人で持たせるなんてのは、バカラグラスでままごとさせるくらい危なっかしいもの。ってことで今回ご紹介したいのが「京豆庵」の絹ごしソフトクリーム。

一つのソフトに絹ごし豆腐を一丁使っているというこのソフトクリームは、まず、お店の人からソフトクリームを受け取った瞬間にびっくりします。っていうのも、このソフトめちゃめちゃ軽い! この軽さゆえに、な、なんと、逆さにしてもほらこの通り。

このソフトに子供の頃出会ってたら、親に阿呆よばわりされることもなかったろうに……。

そもそも、ぼくはとてもお豆腐が大好き。だから他のお店のお豆腐ソフトというか、いわゆる豆乳ソフトに、イマイチ満足できてなかったんですが、ここ「京豆庵」の絹ごしソフトには大満足。だってこれね、はっきり言ってソフトクリーム風豆腐。そう、お豆腐ですよ、これ。ソフトクリームというよりは、マシュマロばりに口当たりがふわっふわで、甘みを抑えた分、大豆の旨さをしっかり感じられるかなり稀有なソフトです。だからもう逆に、お豆腐好きという観点から攻めていくのもありかも。なにせ逆にしても大丈夫なのがこのソフトの特徴ですからね。

【情報】
絹ごし豆腐ソフトクリーム 250円

京豆庵(きょうずあん)
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺立石町2-1
075-572-2287
営業時間10:00〜18:00
不定休


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第1回 ソフトクリーム師匠の懐

みなさんにとってのソフトクリームのイメージは、夢みがちな少女のアクセくらいかもしれないけれど、ぼくくらいになると(いきなり大口たたきますけども)元来クリームっつうもんはソフトなものなのに、そこにさらにソフトと冠むるその堂々たる姿に、殿様のごとし男気を感じたりもするんです。でもってソフトクリームっつうのは、その男気部分がとても大切で、それは言い換えるならば包容力。

アイスの王様たる風格とポピュラリティを獲得しつつも、つねにあたらしいものを受け入れ、「舞台の上で先輩後輩なんてないから」と、どんどん若手につっこまれるソフトクリーム師匠の姿は、あらゆる意味で、でかい。

そんなソフトクリーム師匠が、その歳でこのロケ出ますか!? っつうくらいの驚きを与えてくれたのが、愛知県知多半島のさきっちょにある「ジャコデス」というじゃこ専門店のジャコソフト。コーンの中程までクリームを入れたところで、まずはじゃこを数十匹。さらにその上にソフトをかさね、さいごに再びじゃこをふりかけて出来上がり。その風貌はまるでフンドシひとつで熱湯をかけられた大師匠。ゆえにその味の、見た目にそぐわぬ安心感たるやものすごい。

そもそも甘味に塩気はスタンダード。見た目の突飛さの裏には、日本の笑演芸界の、いや、違った、甘味の歴史が息づいている、ある意味王道ソフトでした。美味し!

【情報】
ジャコソフトクリーム 280円

ジャコデス

愛知県知多郡南知多町大字崎字高岩1
0569-63-0203
営業時間9:00~17:00
不定休


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