
ヨーロッパで腕を磨いたパティシエが、帰国後、名前をアルファベット表記して店を構え、こだわり抜いた材料を集結させて世に放つ、芸術品のようなスイーツ。味も見た目も非の打ち所なし。素敵ですね〜。好きです。ですが! これを、人に当てはめた場合、容姿端麗、頭脳明晰、品行方正、どこから見ても文句の付けようのない完璧なお方(いるのかしら?)、そりゃあ、素晴らしいです、が! どうしようもなく心を持っていかれてしまうのは「あ〜もう、この人のココあかんわ〜」なんて、あかん部分が目についてしまう、けれど恋は盲目、あばたもえくぼ……そんな人だったりします。よね?
閑話休題。ということで、食べるたび「う〜ん」なんて唸るしかない、けれど一度食べると見つけるたび必ず手に取ってしまう、愛しい「あかん子」……。それが、今回ご紹介する、青森の本州最北端、大間崎で出会った「べこ餅」なのです。
「べこ餅」とは、餅米とうるち米でつくられた生地をかまぼこのように細長くまとめ、それを切って蒸し上げたもの。花や樹木など、なんともかわいらしく心惹かれる絵柄が特長です。この絵は、生地をまとめる際に、色紅や珈琲などで色づけした棒状の生地を微妙に組み合わせて作り上げられており、その技術は相当なもの。これが、東北地方、とくに下北半島あたりでは一般の家庭でも作られていると聞きます。

そんな「べこ餅」とはじめて対面したのは、今から5年前。『ほんとうのニッポンに出会う旅』第4章「一生もんの旅」で青森を旅したときでした。いつものごとく車を走らせ、やってきた大間崎。最北端を示す石碑や、大間ならではなマグロのモニュメントに面して並ぶ食堂や土産物屋の一角で出会いました。

蒸し立てホカホカ、可愛らしい絵柄の「べこ餅」をその場で頬張る……と、「う〜ん」。唸る一同。わらび粉や上新粉を主に使用した餅の、いわば洗練されたそれとは違う、ねちゃりとした食感。そして、歯にくっつく、くっつく(笑)。りすチーム、口を揃えて「これ、あかん子やな〜!」。でも、でも、なんだろ? しみじみと、美味。それ以来、見つける度につい買ってしまっては、「う〜ん」。毎回確かめるかのように同じ反応を繰り返すんですよね。完全に「べこ餅」の魅力、いや魔力にやられてしまっている私たちなのです。
ちなみに、昨年の初夏、下北半島、脇野沢の松村家(Re:S8号参照)を訪れたときには、そんな「べこ餅」の新たな一面を発見しました。松村家のおかあさんがふるまってくれた、手作りの「べこ餅」。しかも、焼き「ベこ餅」。

これが、なんと焼くことで生まれた表面のパリっと感&香ばしさのおかげで、ねちゃりとした食感がむしろ長所として浮かび上がってくる。文句無い美味しさが、嬉しくて、ありがたくて、でも、その成長した姿に、一抹の寂しさを覚えたりした私たちでした。ああ、わがままなもんです。
青森県下北郡大間町大間字大間平17-1
りすの旅では、訪れた土地へのご挨拶と、すばらしい出会いへのお礼のため、毎度必ず神社に立ち寄ります。本殿に立って手を合わせ、そして、境内のすべての神様も詣り、そして、しっかりアルバスにご朱印をいただき、そして、そしてそして……その神社ならではの参道美味探索へと繰り出すわけです。
今回ご紹介する「おとりよせぬ」は、そんなときに出会った品。鹿児島県の霧島神宮へ訪れたときでした。その日はあいにくの雨模様。しかし、しとしとと静かに降り続く雨は、山中に構えられた朱塗りの荘厳な社殿になんともぴったりで、そのシチュエーションに知らず背筋が伸びます。一同、言葉少なに神様に手を合わせ、いつものように、最後にご朱印をいただき、ちょっとひと休み、と休憩所へ。

そこで、目が合ってしまったのです。霧島神宮参拝記念「鉾餅」と書かれた看板と。その隣にしっかり用意された試食コーナーと。

もう、こうなってしまうと、その流れには誰も抗えません。さっきまでの厳かな気持ちはいずこへ、一気に食い気モードへとスイッチが切り替わり、りすチーム全員、すみやかに「鉾餅」前へと集合。我先にと試食の鉾餅へ手を伸ばします。甘さ控えめの粒あんを包むのは、鹿児島特産のさつまいもを使用した、ほっこりやさしい甘みの求肥。そこへアクセントを加える、表面のニッキ。これは美味!


ちなみに、商品名は神話に登場する「天の逆鉾(あまのさかほこ)」から。霧島連山、高千穂峰山頂には、実際に鉾が突き立てられているというのですが、いま現在は火山活動のため入山規制中。チャンスがあれば、そちらにも出向きたいところです。
そうそう、最後にこれをお伝えせずに終わることはできません。この「鉾餅」ったら、試食と言いつつ、そのサービス精神は「試食」の域を完全に超えてしまっています。

「さぁさ、いくらでもどうぞ」と言わんばかりにトンッと置かれた山盛りの大きめタッパー! 辺りを見回せど試食コーナーに付き物な、目を光らせるスタッフも不在。これはもう、自信があるからこそできるのでしょう。もちろん、私たちもたっぷり試させていただいてなお、それぞれに買い込みましたから。
899-4201 鹿児島県霧島市霧島田口2608-5
旅をしていてなにより嬉しいのは、その地で流れる日常に触れたとき。それが食だったら個人的にはなおのこと嬉しくて、毎回新しい場所を訪れるたびに、お土産屋さんはもちろん、出来る限りまちなかで店を構える小さめのスーパーにも寄るようにしています。そこでは、かなりの確率で地元の会社が作った、地元で長く愛されてきたお菓子に出会う事ができるのです。しかし、今回の出会いはもっともっとさりげないものでした。
ご紹介したいのは高知県のきしまめ茶。

お茶というと誰もが知る定番のものから、果てしなく深い薬草系までさまざまな種類があるけれど、実はこちらはド定番。といっても高知限定。出会いは、高知に訪れた際に連れて行ってもらった定食屋さんでのことでした。テーブルごとに置かれた家庭用ポットからお茶を汲み、一口。それが「おいしい!」香ばしくて味わい深くて、すぐに飲み干し、もう一杯。ほんのりのこる甘さが後を引くのです。すると、その様子を見ていた高知の方が「ああ、きしまめ茶ね」「きしまめ茶?なんですか?」「その名のとおり、そのへんの川岸に生えとる豆のお茶や」そう、事も無げに教えてくれました。カワラケツメイという豆科の植物を乾燥させたきしまめ茶。どうしても買って帰りたいという私にその方はまたさらりと一言「日曜市行ったら袋にたっぷり入って100円で売っとるわ」その言葉にびっくり。100円!?
ここで少し説明。日曜市とは、毎週日曜日に高知市内のメインストリートを2車線占拠して堂々と開かれる市のことで、全長約1.3キロの間におよそ5000軒が並ぶ土佐の日曜市は、地元の人はもちろん多くの観光客で賑わうのです。

その日は土曜日で、私たちもせっかく高知県に来たのだからと、もちろん日曜市には寄るつもりだったけれど、思わぬ目的が出来ました。そして次の朝早く、訪れてみると、探すまでもなくすぐさま発見。しかも、きしまめ茶はもちろん、番茶やはぶ茶など様々なお茶とのブレンド茶も並んでいます。しかも、どれもたっぷり入って安い。まさに日常遣いのお茶なのです。もちろん買って帰った私は今、我が家で楽しむ毎日だったのですが、あんまり日常遣いするもんだから、のこりもわずかとなってしまいました。高知といえば鰹。その美味しい季節、初鰹を楽しめるうちに再訪せねば、とスケジュール表とにらめっこです。

外郎(ういろう)といえば、誰もが知る名古屋の銘菓。それが、山口にもあって、しかも非常においしいのだということをRe:S10号「木からしる」の取材で山口に足を踏み入れるまでまったく知りませんでした。名古屋のういろうは、米粉を使用するのに対して、山口のほうは、一般的にわらび粉やくず粉などの根や茎の澱粉を使用。ゆえにわらび餅を彷彿とさせる舌触りのよいもちもちプルンな食感が特徴なのです。
山口市内を車で走ればあちらこちらで外郎の文字を目にしますが、数あるなかでRe:Sがご紹介するのは「田原屋」さん。そう、Re:S11号「日本のほんとうに美味いもん」でも登場した名店です。今回のおとりよせぬは、そのとき紹介した大内外郎のほうではなく、前日の午前中までに予約しないと手に入らない田原屋外郎(250円)のほう。はじめて訪れたときその存在を知るが当然手に入らず、どうやら前日予約らしいからこの旅の帰り道にと、前日夕方に電話するも「午前中までに予約を…」で無念。結局3度目の正直で口にできたときには、初来店より約2年が過ぎていました。

国産のまじりっけなしの本わらび粉をぜいたくに使ったこちらの外郎は店に伺う時間に合わせて蒸し上げてくれるので、蒸し立てをいただけるのが何よりうれしい。包装も、味に対する店主のこだわりから真空パックはせず、ふんわりと包むだけ。だから当然日持ちせず、できるだけその日に、なんなら、その場でいただくのがよし。2年越しの想いにほだされ店先の椅子でたまらずかぶりついたわたしたちのように!
山口県山口市大内御堀971-1
083-922-2368
※市内にもう一店舗あり




















