Re:Sスタッフ濱田の写真機を巡る旅。いろんな人の写真とことば。
第6回 よわよわカメラウーマン ナツミさん


よわよわカメラウーマン ナツミ
HP:よわよわカメラウーマン日記 http://yowayowacamera.com/

自身のウェブサイトで「本日の浮遊」シリーズを発表し続ける一方で、The Wall Street Journalなど、国内外の数多くのメディアで紹介されている写真家のよわよわカメラウーマン ナツミさんにインタビュー。「浮遊」の魅力に迫ります。

ナツミ   ボタンを押すのが小さい頃から好きだったんです。
     
濱田   え! ボタンですか?
     
ナツミ   エレベーターのボタンとか銀行のATMとか。だからスマートフォンはちょっと納得いかないんです(笑)
     
濱田   押し甲斐がないですもんね(笑)ピンポンダッシュは?
     
ナツミ   それはしないですね。ピンポンはあんまり好きじゃないですね。
     
濱田   もしかしてカメラを使うきっかけはボタンだったんですか?
     
ナツミ   私の父がNikon F-501というフィルムカメラを持っていて、そのシャッターボタンがすごく魅惑的で、それを押した瞬間に雷が落ちたような(笑)

濱田   「本日の浮遊」シリーズはいつ始まったんですか?
     
ナツミ   今年の1月1日からですね。日記としてやろうと思っているので毎日アップしています。実は、365日プロジェクトなんです。
     
濱田   毎日撮影されてるんですか?
     
ナツミ   毎日撮ることもあるし、まとめて撮ることもありますね。場所をストイックに決めるので光があわなかったりすると機材を用意していても撮らない日もあります。でも、ほぼ毎日撮ってますね。
     
濱田   はじめて「浮遊」を見たときにすごくいいなと思ったのが、表情だったんですが、真顔で浮いているということに強烈に惹き付けられました。
     
ナツミ   やっぱり表情があると見てくれている人が感情移入できないと思うんです。表情がからっぽで色がついていないから、みんなそこに自分をあてはめて浮遊しているように思えるのかな、と。

濱田   ほんと「浮遊」ですよね。「ジャンプ」じゃなくて。すごくフィジカルな動作だと思うんですが、なんでそう見えるのかなあ。
     
ナツミ   例えば「ジャンプ」だと飛ぶために使った力が表情にでてしまうんです。だから飛ぶ前とその後の動きが想定されてしまって「飛んだ」と認識されるんだと思います。
     
濱田   そうか、無表情だからこそ浮いているように見えるのか! そういえば、サイトに浮遊写真の撮り方を掲載されていますよね。僕は最初それをみないでおこうと思っていて。結局読んだんですが(笑)要するに、なんというか「本日の浮遊」には、ある種の魔法のような魅力があると思います。
     
ナツミ   私自身は、浮遊の撮り方を秘密にすることはないと思っているんです。だから、みんなでそれをシェアできればと思って掲載しました。世界中の人が自分で撮った浮遊写真を送ってきてくれますよ。
     
濱田   おお、そうなんですね!
     
ナツミ   浮遊がいいのは、シャッタースピードが1/500以下にならなければ、だいたいは撮れるところだと思います。だから、みんな簡単に楽しんでくれるんだと思います。

濱田   撮影では連射されるんですか?
     
ナツミ   いえ、一浮遊につきシャッターは一回ですね。最初はセルフタイマーで撮っていたんですが、だんだんカメラから離れたところや、人混みのなかで撮りたいと思いはじめて、そういう時は協力者にお願いしています。
     
濱田   一回の浮遊のために何カットくらい撮られるんですか?
     
ナツミ   多いときで、300カットくらい撮ったことがあります。
     
濱田   300回も浮遊していたらまわりの人もびっくりしませんか?
     
ナツミ   意外とその瞬間はみんな気がつかないので、撮った写真にはその人たちのリアクションが写らないんです。
     
濱田   なるほど。誰も気にしてなさそうなので、より浮遊の不思議さが引き立って見えます。


ナツミ   たまに先に気付かれることがあるんですが、それはそれでおもしろいと思います。あと、子供は怖がらないから一緒に飛び始めたりするんです。おもしろいお姉さんがいる、みたいな(笑)
     
濱田   カメラはデジタルですよね?
     
ナツミ   「浮遊」自体は、フィルムでもできることなんですが、撮った写真をその場でチェックしたり、たくさん撮れるという意味でデジタルが私のやり方に向いていると思います。
     
濱田   なるほど。
     
ナツミ   「浮遊」は、ほんとは飛んでいる一瞬を切り取っているんですが、写真はその瞬間を閉じ込めたタイムマシーンだなあって思っていて、そこが写真のおもしろいところだと思います。それはフィルムもデジタルも関係ないと思います。
     
濱田   そもそも「浮遊」を撮り始めたきっかけは何だったんですか?
     
ナツミ   私はあんまり器用じゃないほうなんです。まわりの大人には地に足のついた生活をしなさいと言われたりすることがあって、でも自分はそうじゃないな、と思っていて。だから、それを写真で表現できたらいいなと思ったんです。
     
濱田   その感情の発露が、まさに「浮遊」だったんですね。今や、国内外問わず評価されていますが、まわりのナツミさんへの見方はかわりましたか?
     
ナツミ   わりと変わらないですね(笑)変わったのはむしろ自分ですね。それがこのプロジェクトの一番大きい収穫です。
     
濱田   写真には自分を変えるそういう力があるのかな。今後撮っていきたいものはありますか?
     
ナツミ   今は、次のことは考えられていなくて、とにかく「浮遊シリーズ」をコンプリートしたいなと思っています。
     
濱田   どういうふうに完結するのか楽しみにしています!

【ナツミさんの写真機】

⦿Canon EOS 5D Mk2
 Canon EF50mm F1.2L USM
 EF24-70mm F2.8L USM,
 PENTAX 67 lenses (with adaptors)

写真家・原久路さんの個展イベントにナツミさんが参加されます!

原久路 展 Picture, Photography and Beyond
会期:2011年9月3日(土)〜10月2日(日)12時〜20時 ※月曜休廊
会場:MEM

オープニングイベント(アーティストトーク)
日時:9月3日(土) 18時〜19時
聞き手: ナツミ (よわよわカメラウーマン)
参加費:無料

原久路ホームページ
http://hisajihara.com/

詳しくはこちらにも。