武術家・甲野善紀さんが愛あふれるまなざしで見つめた日本の姿、日々思い考えるあれこれを綴ります。雑誌「Re:S」から続く人気連載です。
第15回

 この「ほころび」の野元浩二氏特集も4回目になってしまった。当初から2回はやろうと思っていたのが3回となり、編集部からの要望もあって4回目となった。
 我々が生きている世の中というのは、やはり時に思いがけないことが起こるものである。この野元氏の特集も思いがけない東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の事故がなければ3回目で終っていたと思う。
 しかし、かつて玄海原子力発電所でも働いていたという経験を持たれている野元氏は、福島の原発があのような人類の歴史上でもチェルノブイリと並ぶ、いやそれ以上ともいえる事故を起こし、とてもじっとしてはいられず、凄まじい勢いで携帯メールを打ち続けられていた。
 その内容を是非「ほころび」にという編集部からの強い要望もあり、今回4回目の「ほころび」登場となったのである。
 野元氏の原稿の最初にも書いてあるが、今年の2月に山口県で「鳥インフルエンザの拡散を防ぐため」という理由で、白鳥が大量に殺処分された時、私も実に嫌な感じを受けたのである。また、宮崎県では火山も吹き、日本の神話の舞台となっているところが多いこの土地に口蹄疫と噴火では、「これはちょっと大変な事になりそうだ」と思った。そして3月11日である。これで、ずっと気になっていた事が一山越えたかというと、そうではなくて、まだいくつかある山場の最初の一山を越えたかどうかといったところだと思う。
 それにしても福島第一原子力発電所の事故は凄まじい。しかも次第に明らかになったところによれば、原発は当初想定外の津波により外部電源が失われて事故に至ったと言われていたが、1号機に関しては、近くの民家も壊れていないほどの地震で冷却水の配管が外れたか何かで、冷却水が流失していた事が明らかになった。
 地震が起きた時、1号機で働いていた人達は、地震で大量の水が溢れ出てきたので、慌てて逃げたそうだから、津波が来る前に冷却水が失われていたという事になる。冷却水が流失してしまっていたら、いくら電源が入ってもどうしようもない。この時点でメルトダウンは必至だったという事になるが、そんな明確な事実も東京電力は報告しなかったという事である。
 現在8月末でも具体的な収束は見えておらず、毎日毎日福島原発は今なお放射性物質を大量に大気中に放出している。事ここに至ると、さすがに事故当初はまだ原発推進に理解を示していた識者も、かなり脱原発に変わってきているようだが、ここでいま一度、この野元氏のメールを読まれて原子力発電について多くの方々に考えて頂きたい。

————–〈東日本大震災と原発事故の予兆!〉
甲野先生! 今年(平成23年)の2月11日に、あっしが先生に送ったメールっす!

ほんの今、昼飯、食いながら、なにげにテレビを見ていたら、山口県で鳥インフルエンザの拡散を防ぐ為とか訳わからん理由で公園の白鳥が、大量に殺されていました! 決めた奴が、死ね! 怒りで爪が、手の平に刺さってしまいやした! まったく人間って奴は!
アホ野元!

口蹄疫で家畜をぶっ殺しまくったのを含め、この胸クソ悪い人間のエゴには、甲野先生、大変お怒りに! ちゅうか、ブチ切れモードになられて、ツイッターも燃え上がって大反響だったんで、よく覚えとらすでしょ! あの後、今までに感じた事も無いような、どす黒い胸騒ぎが続きやした! そいから、甲野先生は、今年前半に、とてつもない事が起こると周りの人達にも常々言っておられやしたが、それが当たっちまいやしたね! 3月11日の東日本大震災と恐怖の原発事故でやんす! あれから、百日以上の月日が、たちましたが、あっしなりの意見と、これからの予想を項目ごとにわけてコメントしやす! (非常事っちゅうのに、ところどころジョークが、入っていたりして不謹慎ですが、ジョークでも言わないと怒りと悲しみで心身が破壊されそうなんで、お許しくだせえ!)

〈非難ごうごう!〉→3月12日に福島第一原発についてのメールを甲野先生に送ろうとした矢先に一号機が、水素爆発して、その夜に例のメールを送ったんすが、このメール内容を武術仲間をはじめとする、いろんな人に送ったところ、そのうちの数人から、「ブログに載せてもいいですか?」と連絡が、入ったもんで、「どんぞ! ご自由によかですばい!」とOKしたら、すごい反響だったらしく(らしく! と言うのは、あっしは、インターネットやツイッターは、必要な時は、見るくせに、基本的には、うっとおしいから、嫌いで、やってないんす! よって股聞きや、股メールに、なっちまってるんすが!)内容は、「私は原子力について知識も興味も全く無かったのですが、知るきっかけになりました…」とか「原発が、こんなに危険なものとは知りませんでした!」とか、お誉めの言葉もあったんすが、それに数倍する「この人、頭おかしいんじゃないですか? こんなことは、科学的にありえない!」とか「こんなデマを流す無神経なバカが、いるから、パニックになるんだ!…」とか非難ごうごうの返信が大量に来て、ブログが、えれえことになったらしいっす! 3月13日朝に甲野先生に送った時のメールを、あえて原文のまま→→→

甲野先生! 阪神大震災の250倍のエネルギーと言われている今回の地震の被害は、まさに想像を絶するものですが、あっしが、知っている限りの武術関係者の方々は、全員無事が、確認できました(震源地に近い宮城県の佐藤さん一家(※Re:S10号掲載、宮城県七ヶ宿の佐藤家)、ほんと無事でよかったっす!)しかし、こんなことを言ったら津波の被害者の方々から殴られそうですが、はるさん(※甲野さんのご子息、甲野陽紀さん)に送ったメールにも書いてたんですが、一番恐れていた原子力発電所の事故が、起こってしまいやした! あっしは、郵便局に入る前は、発電所のタービン関係の仕事をやっていて玄海原子力発電所で仕事をしたことが、ありますし、絵を描いたりなんだり、長崎の原爆被爆者の方々と親しいっちゅうこともあり、手前みそでは、ありやすが、原子炉や放射能の恐ろしさについては、かなり勉強しましたし、被爆者の方々の悲惨さを実際に見たり聞いたりして、詳しいつもりです! なぜ、給料のいい玄海原子力発電所を辞めたかと言うと、原子炉建屋内に入る前日に腕をケガしたために作業できなくなったのと(なんて幸運なケガをしたんだろう! と今でも思うっす! なぜなら、その時に働いていた同僚の多くが、ガンや白血病で亡くなられてるからです!)そいから、原子力委員会に突っ込んだ質問をしたときに、うやむやにしか答えないし、あまりにバカばかりなので頭にきて辞めやした! この世で原子力委員会やその関係者ほど、たちの悪い大嘘つきのバカ集団は、ありやせん(農薬関係者といい、なんで、こいつらカスしかいないんっすかね?)今から書く事は、ほんと心底恐ろしい事で、まるで脅してるみたいですが、事実なんで冷静に読んでください!

広島型原爆、5百発分!(実際は、3千発分!)これが、1986年、チェルノブイリ原子力発電所の事故の時に放出された放射能総量っすが、(今も放出され続けている!)福島の原発は、チェルノブイリ原発が子供みたいに感じる、更に、ふたまわりは、でかい規模の恐ろしい原子炉でやんすが、気になるのは、原子炉内のウランの核分裂によって作りだされる死の灰のヨウ素131とセシウム137が、検出されたことです! ヨウ素131は、甲状腺にたまりガンを発生させるやっかいな奴で半減期が(毒性が、半分になる期間と考えてください! 例えば8日だとすると更に8日たてば半分! 更に8日たてば半分ってことですが、怖いのは、たとえ半減期の短い死の灰でも遺伝子を傷つけることです!)8日! セシウム137は、主に筋肉や子宮にたまりガンを発生させる奴で半減期が、長く30年! 政府は、まだ、発表してませんが、更に危険なストロンチウム90とプルトニウム239も放出されているのは、確実です! ストロンチウム90は、骨にたまり骨肉腫を発生させ半減期は、28年!
人類が、造りだした最悪の猛毒、プルトニウムにいたっては、100万分の1グラム(英文の最後にうつピリオドのインクの16分の1!)で確実に肺ガン、子宮ガンを発生させ、半減期は、なんと2万4千年! 政府は、半径20キロ以内の住民は、避難! などと脳天気な事を言ってやすが、少なくとも半径3百キロは(風向きによってかわりやすが!)危険です!とりあえず、関東、東北地方では、水は絶対に浄水器を通して飲むこと!関東以南で採れた食材しか使わぬこと! 使わざるをえない場合は、よく水洗いすること! 肉は、骨の近くは、たべぬこと!(甲野先生は、肉をほとんど食べないのでよかったっす! ほんと肉類は、死の灰が、生体内濃縮されるので危険っす!)家の隙間は、ガムテープなどで目張りすること! 外出は、しないが、いいっすが、そうもいかないでしょうから、外出する場合は、マスクをつけ、表面が、ツルッっとした長袖の服を着て、帽子やガウンを被り(髪の毛に死の灰が、着くとなかなか取れない!)あとは超花粉症って感じで!(死の灰は、杉花粉の1兆倍以上!いや無限に危険ですが!)それにしても原子炉が完全にメルトダウンした場合、日本どころか、全地球的規模で深刻な放射能汚染になりますんで、最悪、メルトダウンだけは、避けなければいかんですね! やり方としては、まず、水で冷却し(海水を使うようですが、海水の中のナトリウムなどの成分で恐ろしい放射成物質が、生成されやすが!)、ホウ素やカドミウムなどの中性子を吸収する材料で原子炉を覆うしかないでしょう! これでも、かなりの放射能が、放出されるでしょうが、背に腹は、かえられやせん! しかし、原子力委員会や電力会社は、(言っている状況や数値は、全くのでたらめでやんす! まあ、百歩ゆずって考えれば、パニックを防ぐためでしょうが!)万死に値しますが、現場の作業員の方々は、命懸け! と言うよりも命を捨てて(暴力団の組事務所に殴り込みに行くよりも千倍は、怖いでしょう!)作業しているのですから、ただただ頭が、下がります! 人間の、やりたい放題のツケが、まわってきた感じですが、今は、とにかくやれることをやるしかありません!

←←っちゅうメールだったんすが、日がたつにつれ、この内容通りになってきたもんだから大変な事に!(地震規模数値が、250倍から1000倍に変わったり、放射能雨に注意! とかが、抜け落ちたりしてやすが!)それまで、クソミソ非難されていたのが、ピタリと止み!(後日、ツイッターやブログに詳しい友人が言うには、「非難文の内容からして、どうも原子力推進派連中が、自分達に都合の悪い意見を攻撃しているようだぜ!」ってことでやんした!)それに代わって物凄い数の意見や相談メール(股メールを含めると一ヶ月で二千件以上!)や電話が来て、中には、切羽詰まった妊婦さんや乳幼児を抱えている女性から泣きながらの電話が、あったりして、ほんと身につまされる思いで、気合いを入れて答えました! そいから、どうも、あっしを予言者か、なんかと勘違いしたのか、霊能力者や某宗教団体から幹部になりませんか?と電話が、かかってきたのには、まいりやした(笑)! そいやかんやで3月、4月は、ほとんど布団に入る事が無く、ぐっすり寝た記憶が、ありやせん! そのせいか、目の下のクマが、すごかったっす! しかし、自分自身も放射能への恐怖と、なんとかせにゃならんっちゅう防衛本能からか、極限まで追い詰められた心身が特殊な状態になっていて、異常に感が冴え、相手の心が、透けて見えるし、なぜか怪力になっていて、郵便局の若い職員が、バイクを転倒させてグニャリと曲げてしまったハンドルとステップを素手で戻してしまった時は、みんな驚きの声をあげやした! そん時、ふと、雀鬼、桜井会長の顔が浮かんできて、この感覚の延長線上の遥か先に桜井会長は、おられるんやなーっ!と感じやした!
 しかし、六月に入ってから、この状態に慣れて危機感が薄れてきたのか、心身が普通になってきてるようっす! でも喉元過ぎれば、熱さを忘れるじゃいかんですね! 事態は、メルトダウンより深刻なメルトスルー(原子炉には、それなりに詳しいつもりでしたが、初めて聞く用語っす!)になっちまっているし、大量の汚染水は、たまる一方だし! なにしろ、今現在、約11万トンの汚染水に混ざっている放射性物質だけでも37京ベクレル!(億でも兆でもないっすよ!)とのことっすが、あっしの計算では更に一桁上だと思いやす! なぜなら、ぶっ壊れた三つの原子炉の放射能総量は、約、5垓(がい←ついにこの桁が!)6千京ベクレルと試算されてやすが、そのⅠパーセント以下でも約5百京ベクレルだからでやんす! 以前、Ⅰ8万ベクレルのコバルト60が、あれば一つの町を、壊滅させられる! っちゅう話を聞いたことが、あるんすが、この計算には、更に大量の放射能総量の4号機プールの燃料棒は、入ってないんすから、気が遠くなりやす! イッコーさんじゃないっすが、「どんだけーっ!」って叫びたくなりやすよ!
 ただ、一つの救いは、ある理論物理学者が、「溶けた燃料棒の中の比重の重いプルトニウム239が、一カ所に集まり臨界量を超え核爆発を起こす恐れが、ある!」と言っていたのが、外れたことっす! しかし、これは、1957年に旧ソ連の核兵器工場で実際におきた事で、この時は、一つの街では無く、一つの地方(!)が、この世から消えて無くなったのでやんす! なにしろ、長崎に投下された原爆で使われたプルトニウム239(広島は、ウラン235)が、たったの8キログラムで、あの大被害と後遺症で苦しむ膨大な被爆者をだしたんですから! 福島原発のプルトニウムは、トン単位! 否定する科学者が、多いんでやんすが、東電子飼いのバカばかりのドブネズミ御用学者どもの言うことは、(ドブネズミに悪い!)デタラメばかりなんで信用できんし、臨界しないことを祈るしかありやせん!(なにしろ放射線が、強すぎて調べようが、ないんすから!)
 あっ、バカと言えば、ほんと、東電、原子力保安院、原子力安全委員会をはじめ、さっき言った、ドブネズミ以下の御用学者に、スポンサーにしっぽをふるだけのマスコミや目先の利益しか考えてない推進派のクソ野郎どもの中に、いっその事、物凄く頭が良くて、ずる賢こい、本物の悪党が居れば、ある意味、安心なんすが、奴ら先を見越せない、ただのバカばかりだからマジで怖いっす! 次は、実際に現場でやりあった突っ込んだ生の話をしやすんで、甲野先生! アホなあっしの、たわ言をまた、聞いてくだせえ!
アホ野元!

甲野善紀(こうのよしのり)
1949年、東京に生まれる。1978年、武術の研究を専門とするため松聲館(しょうせいかん)を設立。以来、他流儀や異分野との交流を通して、現在では失われた精妙な古伝の術理を探求しつつ、武術の研究を行っている。著書も多数。
http://www.shouseikan.com/