

1978年、岡山生まれ。日本全国に残るトーチカ、砲台跡などを撮影した『戦争のかたち』を出版。昨年から東京、水戸、倉敷、岡山、大阪などで作品を展示。上は展覧会『絶滅危惧・風景』@大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室(2011年2/26(土)〜3/21(祝))の展示室にて。http://m-shitamichi.com/
※インタビューは2011年3月5日に行われたものです
(上編からの続き)
ーー日本全国を撮影されてますが、旅のペースはどれくらいですか。
当時は、テレビ番組のリサーチャーの仕事をしていて、それが月に1回は会議がある。だから、2週間は旅に出て、あとは仕事をしたり、取材の準備をしたり。
ーーリサーチャーだったんですね。ちなみに、どんな番組を担当されてるんですか?
某番組で若手芸人のリサーチをしたり、最近だと教育テレビの子ども向けのネタを探したり。旅に出ても、帰った後に写真を焼いて編集作業をしたり、お金を貯めたりするので、旅は3カ月周期くらいですかね。
ーー旅のリサーチもお手のものですね。
九州に行こうかなって決めたら、あそことあそこのポイントには行って、あとゲストハウスで面白いところはココとココでって調べて。
ーーゲストハウスも面白いところがありそうですね。
ライダーハウスが面白いですよ。もともと北海道には100軒以上あって、北海道で経験した人が自分の地元ではじめたのも多くて。タダで泊まれたり、廃線の駅に泊まれるようなところもあって、そういう機能を失った建物の活用という意味でも「戦争のかたち」とよく似てる。

「RIDER HOUSE」
だから、旅って目的地を決めるとその過程に副産物が多くて、そういうところから次のシリーズがのびてくる。つまり、あるメインのテーマで目的地を決めて、その過程でいろんなものを見つけていく。そういう旅は今でもやっています。

室蘭にあるライダーハウス白鳥の宿にて。「RIDER HOUSE」
ーーライダーハウスの他にも気にされてるものがあれば知りたいです。
なんだろう…。作品にしたものはまだないかもしれないですね。
ーー鳥居も撮られてますよね。神社にも立ち寄りますか?
あまり行かないですね。基本的に神社に興味があるわけじゃないから。鳥居は「戦争のかたち」の延長線上で、たとえば韓国や台湾など、日本の国境線からぎりぎり外側に出ると、そこで日本が残した建物や歴史に出合ってしまう。それはやっぱり興味深くて、だって、ある意味で強い岩盤の向こう側の風景だから。

「torii Taiwan/台湾」
やはり鳥居は一番シンボリック。見えにくい風景だからこそ、シンボリックに見せることが必要な部分はあります。だけど、鳥居をあつかうって宗教を扱うことでもあるから、そっち側に絡めとられるようなところがすごく難しくて、それをどう絡めとられないように見せていくか。(鳥居のシリーズは)その編集に時間がかかってますね。
ーーなるほど。だから、鳥居は国境の外側で撮影されてるんですね。
その副産物として「そといす」という作品もあって、これは路上に置いてある椅子。とりあえず座るためだけのものや、石を積んで座布団をのっけただけだけのものも。そういう「そといす」のようなカテゴリーを決めておくと、楽な面もあって、電車に乗ってても、「あっ! そといす!」って。で、電車を降りて撮影に行ったりする。「そといす」というのもヒューマンスケールが見えやすいから、人がいなくても人が見えるいい素材だと思っています。

「そといす/outside chairs」
ーー写真にはあまり人物は写ってませんが、根っこには人への興味が強くあるんですね。
やっぱり人の生活臭の強いところが好きですね。旅でも、誰かと一緒に行くのは好きで、よく友達と一緒にも行きますよ。自分とは違う理由で、一緒にその町へ行ける人。前に韓国へ行ったときには、古民家を研究してる友達と行きました。やっぱり自分とは違うところで面白がってた。
こないだの台湾では、地元の人と話したくてしかたないのに全然話せなくて。それで台湾の知り合い経由でメールを出して、こういうアーティストがいて、お金はほぼ出せないんだけど、何日か一緒に旅をする相手を探してると。そしたらそこに女の子が一人来てくれて、そのおかげで村にも入りこめたんだけど、それよりも彼女と仲良くなっていく感じ、俺の旅に彼女も巻き込まれていく感じはすっごく面白かった。
ーー旅先での縁を呼び込むための構えも必要だと。
ダイレクトに目的地まで着いちゃうと副産物がないし、トラブルに巻き込まれない。トラブルに巻き込まれるのもありだと思う。それも副産物。だから、ある程度の時間の余裕を見て、少し離れたところから目的地に近づいていくと、いろんな経験があるし、思っていたのと違うものも見つかる。
ーーかなり気まぐれな旅でもあるんですね。
だけど、結構、家も好きだから。写真をネガで撮ってるのも、旅先ではどんどん撮ったものをブラックボックスに入れていくんだけど、1週間ぐらい旅をしていて、いい写真が撮れすぎると早く家に帰りたくてしょうがない(笑)。
ーー早く現像したい!と。
そうそう。意外と旅の半分くらいからは帰りたくなってる。もちろん、もう1回そこに行くのは大変だから、目的地までは行くんだけど。だから、旅中はデジタルであまり撮らずに、フィルムに入れていく。帰って暗室で現像して、そこでまたその風景と出合えるのも楽しみだし。
文章もそうで、旅中に面白い経験があったと感じたら、とりあえずメモ書きのようにあったことすべてをがーっと書いておく。で、しばらく寝かす。また何かのタイミングであそこの経験のことを書きたい! となったときにその文章を読むと、自分が見ていた風景を客観的に、頭の後ろあたりから見れる感じがある。

「torii saipan(U.S.A.)/サイパン島(アメリカ領)」
ーー下道さんの作品から感じる客観的な視線はそうやって生まれるんですね。
たとえば、経験してすぐのイヤな気持ちだと、その目線でしか感じられないから、実はすごい経験だったりするのにそれが見えない。そのときには、自分にとって重要なポイントがまだ出てきてないのかもしれない。だから、寝かす必要がある気がします。
ーーあえて旅先でケリをつけてしまわないってことですね。
そう。メモだけして、何もやらずにしばらくハコにしまっておく。
ーーなるほどなるほど。…もうちょっとだけ続きます。




















